代謝内科・生活習慣病
代謝内科・生活習慣病とは
長い間の生活習慣(偏った食生活、運動不足、ストレス、飲酒・喫煙など)が原因となる病気、いわゆる生活習慣病を中心に診療いたします。 生活習慣病には、糖尿病をはじめ、脂質異常症、高血圧症、メタボリックシンドロームなどがありますが、これらは代謝の働きを阻害する病気でもあり、代謝疾患とも言われています。
脂質異常症
- 脂質異常症とは
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血液中に含まれる脂質であるコレステロール(LDL(悪玉)コレステロール)やトリグリセライド(中性脂肪)の濃度が慢性的に高い状態、もしくはHDL(善玉)コレステロールが少ない状態を脂質異常症と言います。
コレステロール自体は、細胞膜・ホルモン・胆汁酸をつくる材料であるなど体に必要なものなのですが、(LDL)コレステロールが多すぎると血管にこれが蓄積されて動脈硬化を誘発します。 放置すると血管が狭くなったり、詰まったりするなどして、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞を発症する原因となるのです。
発症する主な要因は、エネルギー過多な食生活や嗜好品(タバコ・お酒など)の過剰摂取、運動不足などの環境的要因が重なって引き起こされると考えられています。
なお、脂質異常症は、以前「高脂血症」と呼ばれていましたが、コレステロールが少なすぎても免疫力が低下するといった症状を起こすことがあり、現在の疾患名となりました。
- 脂質異常症の治療
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治療については、主に食事療法と運動療法、および薬物療法になります。
その中でも重要なのが食事療法です。
脂質異常症は主に3つのタイプに分類されるのですが、高LDLコレステロール血症の方であれば、質の悪い脂肪酸を含む食品(ラード、牛脂、ベーコン、鶏皮、高脂肪乳製品など)を減らし、質のよい脂肪酸を含む食品(オリーブオイル、ごま油、魚油など)に変換しましょう。
高トリグリセライド血症の方は、糖質の多い食品や飲酒を控え、摂取エネルギー(カロリー)をコントロールすることなどを心がけます。
また、低HDLコレステロール血症の方は、肥満の場合は体重管理を行います。
運動療法に関しては、ウォーキングや軽いジョギング、水泳などを行うとよいでしょう。 軽めの有酸素運動でも長く続けていると、トリグリセライドを減らし、HDLコレステロールを増やすことができます。
このほか薬物療法では、LDLコレステロールを下げる薬や、トリグリセライドを下げる薬が処方されることがあります。 処方された際は、医師の指示通りにきちんと服用してください。
痛風
- 痛風とは
- 血液中の尿酸が多くなり過ぎている状態を高尿酸血症といいます。 この症状になると、針状の尿酸塩の結晶ができてしまい、体のあちこちに溜まります。 結晶が留まることで、とくに足の親指の付け根が赤く腫れて激しい痛みを引き起こすようになります。 これが痛風なのです。 通常は耐え難い痛みで来院する患者様がほとんどですが、さらに放置をすると腎臓障害などを引き起こす怖れもあるのです。
- 痛風の治療
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まず尿酸値を下げることから始めます。
それには食事療法として、プリン体を多く含む食品の摂取を控えめにし、バランスの良い食事を摂ることに努めます。
プリン体とは、毎日の新陳代謝で新しくつくり変えられる(体の)細胞の核から生成される物質で、レバー類、干し椎茸、魚卵類、えび、かつお、いわしなど一部の魚介類に多く含まれています。
さらに、アルコール飲料には尿酸値を上昇させる作用がありますので、禁酒および節酒を心がけます。
食事療法と同時に運動療法も行い、肥満の解消にも努めます。 これらの療法以外にも、尿酸の生成を抑制する薬や、尿酸の排泄を促す薬などが処方されることがあります。
生活習慣病
- 高血圧
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心臓は血液を全身に送り出す際にポンプのように伸縮していますが、血液が流れるときに血管にかかる圧力が血圧です。
この血圧がある程度の範囲を超えて慢性的に高く維持されている状態が高血圧です。
血圧には収縮期血圧(最高血圧)と拡張期血圧(最低血圧)があり、その両方の数値を測定します。 なお高血圧と言われる数値は、外来で測定の場合は最高血圧が140mmHg以上あるいは最低血圧が90mmHg以上の場合を言います。
血圧の高い状態が続くと、血管壁が圧力によるダメージを受け、動脈硬化の原因になります。 動脈硬化が起きると、狭心症や心筋梗塞、脳卒中、腎臓病などを招きやすくなるのです。
高血圧を発症する原因については、まだはっきりと解明されていませんが、食生活(塩分の多い食事)や嗜好品(タバコ・お酒など)の摂取過多、運動不足や精神的ストレスなどの環境的要因が重なって起こったり、遺伝的要因が考えられます。
このほかにも、特定の病気や薬物の副作用など、原因がはっきりしている高血圧(二次性高血圧)もあります。
- 高血圧の治療
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高血圧は無症状のため放置してしまう傾向にあるので、健康診断などを通じて早期に発見し、適切な対策を講じることが大切です。
高血圧と診断されたら、生活習慣の改善から始めます。
まず行うべきは、適正な体重にし(BMI25未満)、適度な運動(1回30~60分以上、週に3回以上の有酸素運動)を継続的に行い、1日6g未満の減塩(まずは即席麺や梅干し、塩鮭など塩分の多い食品を控える)に努めるなど、生活習慣の改善(食事・運動療法)をすることです。
また、医師から降圧薬などを処方されたら、指示通りにしっかりと飲むようにしてください。 一度薬を飲み始めたら、一生やめられないと思っている方もおられると思いますが、食事・運動療法の継続により症状が改善してくれば、薬の量を減らしたり、止めたりすることも可能です。
メタボリックシンドローム
- メタボリックシンドロームとは
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肥満には、上半身肥満と下半身肥満があり、上半身肥満は内臓の周りに脂肪がつきやすい「内臓脂肪型肥満」の割合が多いとされています。
この型の場合は、内臓まわりに脂肪が溜まってお腹がぽっこり出ている状態で、血糖、血圧、血中脂質値などの値が異常をきたしやすく、糖尿病、高血圧、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病が重なりやすいことがわかっています。
このような内臓脂肪型肥満で、それに加えて血圧・血糖・血中脂質のうちの2つ以上が基準値を超えている状態を「メタボリックシンドローム」(内臓脂肪症候群)と言います。
メタボリックシンドロームの患者は、血糖、血圧、血中脂質などの値がそれほど異常でなくても、それらが重なることによって動脈硬化が一層進展しやすくなり、ひいては心筋梗塞や脳血管障害など、生命にもかかわる心血管事故が起こるリスクを高くしてしまいます。
- メタボリックシンドロームの診断基準
- メタボリックシンドロームを判定する際はCT検査もありますが、それよりも簡単に判定する基準として腹囲測定があります。 おへその位置で腹囲を測定し、男性で85cm以上、女性で90cm以上の腹囲がある場合は、メタボリックシンドロームの疑いがあるとされ、さらに血圧、血糖値、血中脂質の項目で2つ以上基準値を超えている場合、メタボリックシンドロームと診断されます。
診断基準項目
- 内臓脂肪型肥満:ウエスト周囲径(立位・軽呼気時・臍レベルで測定)
男性:≧85cm 女性:≧90cm
血液検査で中性脂肪値(トリグリセライド)が150mg/dL以上、またはHDL(善玉)コレステロールが40mg/dL未満である- 血圧(高血圧)
最高血圧が130mmHg以上、または最低血圧が85mmHg以上である - 血糖値(高血糖)
空腹時の血糖が110mg/dL 以上である